【プロが教える】絶品の博多水炊きレシピ


博多の名物料理として広く知られる「博多水炊き」。多くの方が「白濁したスープが定番」というイメージを持っているかもしれませんが、実は同じ「水炊き」でも、透き通った琥珀色のスープで楽しむ流派があるのをご存じでしょうか。
こうした透き通った博多水炊きは、じっくりと高温を保ちながら沸騰させないことで、鶏ガラや野菜の旨味だけがにじみ出る一番出汁のような美しいスープに仕上がります。一方、白濁スープは乳化させるまで煮込むことで、見た目にも濃厚な白濁色になります。
本記事では、透き通った琥珀色スープの博多水炊きに焦点を当て、最初に鶏肉だけを入れてスープを味わい、最後には雑炊で締めるという「おすすめの食べ方」や作り方のポイントまで、余すところなくご紹介します。これから博多水炊きを楽しみたい方はもちろん、すでに白濁スープの水炊きを経験された方でも、「透き通った水炊き」の新たな魅力を発見していただけるはずです。

博多水炊きとは?白濁スープと琥珀色スープの違い

博多水炊きの起源と特徴

博多水炊きは、鶏ガラや鶏肉を水から炊き上げるシンプルな鍋料理です。博多の郷土料理として古くから愛されており、素材の旨味を最大限に活かすため、「雑味を入れない、シンプルな下ごしらえ」が特徴とされています。塩や醤油などの調味料は控えめで、鶏の出汁の奥深い旨味をストレートに楽しめるのが魅力です。

白濁スープと琥珀色スープの違い

一口に「博多水炊き」といっても、大きく2つの流派があります。

白濁スープ

  • 鶏ガラを沸騰させ、高温のまま長時間煮込むことで脂肪分やタンパク質が乳化し、白濁したスープが完成。
  • 見た目にとても濃厚で、味わいもまったりとしたコクが強い。
  • 麺類などと合わせても美味しく、パンチのあるスープが好きな方におすすめ。

琥珀色スープ(透き通ったスープ)

  • 鶏ガラを沸騰させず、90〜95度程度の高温を保ちながら炊き続けるため、透明感があり、あっさりとした一番出汁のように仕上がる。
  • 旨味はしっかりしているのに、後味が軽やかなのが特徴。
  • スープ自体をまず味わう楽しみがあり、繊細な味わいを好む方にはこちらがおすすめ。

どちらが優れているというわけではなく、お好みやシチュエーションに合わせて選ぶことがポイントです。

博多水炊きの基本構成:鶏ガラを活かした絶品スープ

鶏ガラ出汁がベース

琥珀色スープの最大の特徴は、鶏ガラから丁寧に旨味を引き出したスープにあります。ガラを水から煮始めることで、必要なエキスが溶け出し、濁りやくさみを最小限に抑えることが可能となります。

野菜や香味野菜の活かし方

レシピによっては、玉ねぎ・人参・セロリ・生姜などを一緒に加え、風味や甘みをプラスします。透き通ったスープの場合は、煮込む温度や時間を絶妙に調整することで、この香味野菜の風味が前面に出すぎないようにするのがコツ。

  • みりん、塩、醤油、料理酒などの調味料もあくまで「引き立て役」。
  • 鶏ガラと野菜の旨味がメインなので、追加する調味料のタイミングや分量は慎重に見極める。

仕上げの温度管理が大事

琥珀色スープを作るには、9095度の「沸騰しない温度」を約3時間保つことがポイント。

  • 沸騰させてしまうと乳化が始まり、白濁スープへ移行してしまう。
  • ゆっくり時間をかけて火を通すと、くさみが少なく、透明度が高くて旨味の濃いスープに。

透き通った琥珀色のスープが生まれる理由

一番出汁に近い鶏ガラの旨味

魚介の一番出汁にたとえられるように、鶏ガラ本来の繊細な風味だけを抽出したのが琥珀色の水炊き。短時間では得られない複雑な旨味とあっさり感が同居しているのは、この「沸騰させない炊き方」のおかげです。

沸騰させない火加減のコントロール

沸騰させずに火加減をコントロールするのは、意外と難しい作業です。プロの現場では、温度計を使い、火力調節をこまめに行いながら慎重に見極めます。

  • 自宅でチャレンジする際は、弱火〜中火の間で微妙な火加減を調整すること。
  • ぐらぐら煮立つ手前で火を弱める、という感覚が必要。

乳化前に仕上げるタイミング

乳化してしまうと白濁スープになってしまうため、乳化寸前の状態で炊き上げを終了させるのがプロの技術。これにより、澄み切った琥珀色のスープが完成します。

琥珀色のスープが完成したら、鶏ガラと野菜類を取り除き、しっかり濾します。

味わいのポイント:野菜を後半に入れる理由と鶏の旨味の相乗効果

鶏肉だけを最初に入れる理由

以下の工程が、完成した琥珀色スープを最大限に堪能するための大きなポイントです。

1.スープを加熱し沸騰させる。

(完成後のガラを取り除いた琥珀色スープは沸騰させて大丈夫です)

2.もも肉の切り身、ももぶつ切り、鶏つみれ等を先に投入。

3.野菜は入れず、しばらく鶏の旨味がスープに溶け出すのを待つ。

この順番にする理由は、余計な水分を出さないため。野菜を最初から入れてしまうと、野菜の水分がスープに流れ込み、せっかくの鶏の濃厚な旨味が薄れてしまう可能性があります。

野菜を入れるのは鶏の後

ある程度スープの鶏旨味が増し、鶏肉が火を通された後で、好みの野菜やキノコなどを入れましょう。野菜から甘みや香りが出ることで、スープの味わいがまた一段と深まります。ただし、最初の鶏だけで味わうスープの純粋さを損なわないためにも、野菜の投入は後半がベターです。

スープの味わいを損なわない具材の選び方

透き通ったスープを邪魔しない具材の選び方としては、

  • えのき茸やしめじなどのキノコ類(ダシと相性がよい)
  • キャベツ(白菜)やネギなどの主張が強すぎない野菜
  • 豆腐や厚揚げ等も、具材がスープを含み美味しくなる
    などが挙げられます。
    匂いや色が強い野菜は風味が大きく変わるため、好みに応じて入れるタイミングに注意しましょう。

鶏肉のカットと具材の種類:もも肉の切り身、ぶつ切り、鶏つみれ

もも肉の切り身

スライス状の薄切りではなく、一口大にカットしたもも肉を使うのがおすすめ。火が通るとしっかりとした歯ごたえを保ちつつ、噛むたびにジュワッと旨味が溢れます。

もも肉のぶつ切り

骨付きのぶつ切り肉は、骨の周りに旨味が集中しているため、スープ自体に奥行きが増します。骨付き特有のコクがあり、ガブッと豪快に食べる楽しみも。

(食べる際には、骨に気をつけてお召し上がりください)

鶏つみれ

鶏ひき肉に生姜やネギなどを混ぜ、ふわっと丸めた鶏つみれも人気の具材。

  • つみれの柔らかな口当たりと、もも肉の歯ごたえのコントラストが楽しい。
  • つなぎには卵や片栗粉などを使い、ほどよくまとまるようにすると煮崩れしにくい。
  • お好みで小さく砕いた鶏軟骨を入れると食感を楽しむことができます。

スープを活かす食べ方の手順:鶏肉から楽しむ秘訣

ここでは、炭寅をはじめとした博多の名店で提供される**「鶏だけを最初に入れる」**という独特の食べ方を詳しく見ていきましょう。

スープの味見を最初に

  • 火にかけて温度が上がったら、まずは何も入れないスープをひと口。
  • ここでスープの「もとの味」を確認しておくのがポイント。

もも肉の切り身・ぶつ切り・鶏つみれを投入

  • 肉を入れて煮込むうちに、さらにスープに鶏の旨味が濃縮される。
  • 火が通るまで待つ間に、肉から出る旨味をスープが吸収。

肉が食べごろになったら最初に味わう

  • 何も入っていないスープと比べると、肉の旨味がプラスされ、見違えるような深みが生まれる。
  • ポン酢や薬味と合わせて食べてもよいが、まずは何もつけず鶏肉本来の味を楽しむのがおすすめ。

次に野菜を投入

  • 鶏肉だけである程度楽しんだら、野菜やキノコを入れる。
  • 野菜の甘みや香りが加わって、スープにまた違った表情が生まれる。

味変アイテムを活用

  • 琥珀色スープには、スープの旨味を消さない柚子胡椒がおすすめです。少量ずつ入れて、お好みの味に調整してください。
  • ポン酢やごまダレは、後半の味変で使用されることをおすすめします。

野菜を入れるタイミングとおすすめの種類

ベストな野菜投入タイミング

前述の通り、野菜は後半に入れるのが推奨。理由は以下の通りです。

  • まずは鶏肉の旨味がスープに充分出てから
  • 野菜の水分や風味がスープを薄めるリスクを回避
  • 最初から野菜を入れると、野菜の水分や甘さが全面に出てしまう

おすすめの野菜・キノコ

  • キャベツ:ほどよい甘みがスープとマッチしやすい(白菜は煮込むと水分が出て、スープが薄くなるので、水分をしっかり切る)
  • 長ネギ:青い部分も斜め切りにして使うと風味アップ
  • えのき茸・しめじ:スープに旨味が出ます(スープとの相性◎)
  • 豆腐・厚揚げ:具材にスープの旨味を含み美味しくなる、植物性たんぱくも補える

入れすぎ注意

スープの量と具材のバランスを考慮し、入れすぎないのがコツ。琥珀色のスープをしっかり楽しみたい場合は、鶏肉のうま味を邪魔しない程度に抑えましょう。

こだわりの締め:雑炊で最後まで堪能する方法

雑炊が美味しくなる理由

鶏肉と野菜の旨味がしっかり溶け込んだあとのスープは、まさに味の宝庫。ここにご飯や麺を入れるだけで至福の一品となりますが、特に雑炊がおすすめされるのは、卵のやさしいとろみと米の甘みがスープと絶妙に絡むからです。

雑炊の作り方

1. 具材を一旦取り出す

  • 鍋の中の野菜や鶏肉を別のお皿に取り分ける。
  • スープの味を雑炊に集中させるため。

2. ご飯を入れる

  • 冷ご飯でもOK。軽く水洗いして余分なヌメリを落とすと、より澄んだ味わいに。
  • 火加減は中火程度。ぐつぐつ煮立たせないように注意。

3.適度にほぐしながら、味をなじませる

  • スープの旨味を米に吸収させるイメージで。
  • 味を見ながら、塩・醤油などで微調整。

4.最後に溶き卵を投入

  • 卵を回し入れ、半熟状態で火を止める。
  • お好みで刻みネギや海苔を散らしても美味。

5.好みでポン酢や柚子胡椒を足す

  • シンプルな雑炊が好きな方はそのままで。
  • 柚子胡椒などで香りをプラスすれば、また違った味わいに。

透き通ったスープを自宅で再現するコツ

ガラの下処理

スーパーなどで鶏ガラを手に入れたら、流水でしっかり血合いや汚れを取り除きましょう。下茹でしてから使うレシピもありますが、透き通ったスープを目指すなら下茹でのタイミングや時間は慎重に。

  • 長時間下茹ですると旨味も抜けやすくなるので注意。

温度管理

沸騰させないが最大のポイント。

  • 90〜95度をキープするため、弱火から中火で優しく煮出す。
  • 途中で灰汁(あく)が出るので丁寧に取る。

調味の最適化

みりんや塩、醤油、料理酒などを加えるタイミングが肝心。一度に大量に加えるのではなく、少量ずつ味を見ながら調整し、鶏本来の旨味を損なわないようにする。

時間をかける

美味しい琥珀色スープは時短調理ではなかなか出せません。最低でも3時間程度かけて炊くことで、雑味のない深い旨味を作り出すことができます。

プロ直伝のポイント:あく取りや火加減のテクニック

あく取りのコツ

  • あくが出始めたら、こまめにすくう。
  • 透明な琥珀色を保つにはあく取りが欠かせない。
  • 大きめの網じゃくしやあく取りシートを活用すると便利。

火加減のテクニック

  • はじめは強めの火で温度を上げ、90度近くになったら弱火に落とす。
  • 温度を一定に保つため、蓋はしないほうが良い場合も。
  • ガスコンロでは微調整が難しいので、IHなら温度調節が比較的容易。

博多水炊きでよくある質問(Q&A

Q1. 琥珀色スープと白濁スープ、栄養価はどちらが高い?

どちらもベースは鶏ガラからの抽出成分なので、栄養価には大きな差はありません。ただし、白濁スープのほうが脂肪分多めになりやすい傾向があります。あっさりいただきたいなら琥珀色、コクを求めるなら白濁がおすすめ。

Q2. 子どもでも食べられますか?

もちろんです。塩分や刺激物を控えめにすれば子どもからお年寄りまで幅広く楽しめます。ポン酢や薬味を調整して、家族みんなで同じ鍋を囲むのも◎。

Q3. スープが途中で白濁してしまった場合はどうすればいい?

一度白濁してしまったら完全に戻すことは難しいですが、あく取りを徹底し、火加減を弱めに調整すればある程度クリアな状態に近づけることはできます。
ただし、途中で白濁しても決して失敗というわけではなく、白濁水炊きとしておいしくいただくのもアリです。

Q4. 冷凍保存は可能?

煮込んだスープだけを取り出し、冷ましてから冷凍保存すると便利です。1〜2週間を目安に使い切りましょう。ただし、解凍後は風味や香りが多少落ちるので、野菜や新鮮な鶏肉を追加してリメイクするのがおすすめ。

水炊きの本場、博多の逸品「炭寅」の水炊きをご家庭でお楽しみいただけます。

水炊きの本場、博多の逸品「炭寅」の水炊きをご家庭でお楽しみください。炭寅が自身を持ってお届けする鶏屋こだわりの水炊き。程よい弾力とジューシーな肉質の佐賀県銘柄鶏「みつせ鶏」と炭寅自慢のみつせ鶏の琥珀色のスープ。

全てが相まって極上の水炊きに仕上がっています。是非一度ご賞味くださいませ。

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まとめ:透き通った琥珀色の博多水炊きこそ、鶏の純粋な味を堪能する真髄

いかがでしたでしょうか。博多水炊きというと白濁スープをイメージされる方が多い一方、実は「透き通った琥珀色スープ」という流派もあり、その魅力はじっくり沸騰させずに炊き上げることで生まれる繊細な旨味と美しい見た目にあります。
鶏肉をまず入れてスープに旨味を溶け出させること、野菜を後半に入れることでスープが薄まらず鶏の味を存分に味わえること、最後に雑炊で締めることで滋味豊かな余韻を楽しめること――これらの手順を意識するだけで、あなたの水炊き体験は格段にアップすることでしょう。
また、この透き通った博多水炊きは、あっさりしているのにしっかりコクがあるという絶妙なバランスが魅力。コラーゲンやアミノ酸など、身体に嬉しい成分もたっぷりと含まれています。
家庭で再現する際は、沸騰させずに火を入れるための温度管理と、丁寧なあく取りがポイントとなります。少し手間がかかるかもしれませんが、その分、出来上がった時の感動はひとしおです。
どうか、最初はスープだけを味わい、次に鶏の部位ごとの風味を楽しみ、最後に野菜と雑炊で締める――このステップを守れば、あなたもきっと博多水炊きの奥深さに魅了されるはず。特に透き通った琥珀色のスープは、一番出汁のように澄んだ見た目と上品な口当たりが一段と新鮮な驚きを与えてくれます。
もし「自分で作るのは難しそう…」と感じる場合は、専門店で体験してみるのも一案です。プロの技術と素材の力が合わさった一杯を味わえば、その美味しさの秘密に思わず納得することでしょう。
いずれにせよ、博多水炊きは鶏ガラからとったスープを存分に堪能するための料理。白濁か琥珀色か、好みのスタイルは人それぞれですが、透き通った水炊きこそ「鶏の純粋な味わい」を存分に楽しむには最適と言えます。ぜひ一度、自宅や専門店で試してみてください。
あなたがこの琥珀色の博多水炊きの魅力を知り、鍋を囲むひとときがより豊かなものになることを願っています。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

記事の監修

炭寅編集部

現在は、佐賀・福岡・東京を中心に、備長炭と粟国島産天然塩で焼き上げる焼き鳥をはじめ、水炊き、創作料理店を展開しております。 自社で開発、生産してきた「みつせ鶏」を100%使用し、育てる・さばく・加工する・調理する・お客様のもとへ運ぶ。創業以来、これらを自社で一貫して手掛けてきました。

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